屋根の葺き替え工事は、住宅のメンテナンス工事の中でも特に高額ですし、可能な限り先延ばしにしたいと考えている方が多いと思います。葺き替え工事は、既存屋根を一度解体して、新たな屋根材を葺いていくという工事ですし、施工中は家の周囲を足場で囲まれてしまうため、日常生活が不便になるのではないか…と感じることから、できるならば行いたくない…と考えてしまうことでしょう。
しかし、どのような屋根材を採用しているにしても、それぞれの屋根材に寿命というものが存在しますし、いずれ葺き替え工事をしなければならない時はやってくると考えてください。特に、瓦屋根に関しては、屋根材の耐久力が非常に高いことから、家そのものの寿命以上に瓦の寿命が長いときくし「瓦屋根の私の家は葺き替え工事をしなくても良い!」と考えてしまっている方が多いのですが、これは間違った認識です。確かに、屋根材である『瓦』に関しては、100年以上も持つと言われるような耐久力があるのですが、瓦屋根にはその他にもさまざまな副材が使われており、それらが劣化してしまうことから、他の屋根材同様に葺き替え工事は必要になると考えなければいけません。
そこでこの記事では、誰もが先延ばしにしたいと考えている屋根の葺き替え工事について、屋根材の寿命から考えた時の葺き替えタイミングと劣化症状から考える葺き替えタイミングをご紹介しておきます。
「そろそろ葺き替え工事が必要かな?」と考えるべき時期
それでは、いずれ必ずしなければならない葺き替え工事について、適切なタイミングで工事を行えるようにするため、おさえておきたい屋根材ごとの寿命から考える葺き替え工事の目安について解説します。
冒頭でご紹介したように、葺き替え工事というものは、住宅リフォームの中でも特に大掛かりな工事になってしまい、工期もそれなりに長く工事にかかるコストも高額になってしまいます。そのため、葺き替え工事の必要性は理解しつつも、「できるだけ先延ばしにしたい…」と考えてしまう方が多いのです。
最初に言っておきますが、屋根の葺き替え工事については、いずれしなければいけない工事ですし、適切なタイミングで行わなければ、屋根の問題だけにとどまらず、住宅全体の寿命を縮めてしまうリスクがあると考えてください。というのも、屋根というものは、雨や風など、住宅に悪影響を与える現象から、建物や中に住む人を守る目的で作られています。それなのに、屋根の状態が万全でない状況で放置すれば、雨水の侵入を防げなくなり、建物内に浸水してしまうことになるのです。日本の住宅は、木造住宅が大半で、水に非常に弱いという欠点があり、浸水を防げなくなると、建物を支えている柱などの木材が腐食してしまうことになるわけです。
他にも、シロアリの繁殖などを招いてしまい、家の価値を大幅に下げてしまうなど、葺き替え工事にかかる費用とは比較にならないほどの損をしてしまう危険があるのです。ここではまず、さまざまある屋根材そのものの寿命をご紹介しておきますので、ここから葺き替えタイミングを検討してみても良いのではないでしょうか。
屋根材の寿命と葺き替えタイミング
一般的にですが、屋根の葺き替え工事が必要になるタイミングは、築20~30年程度が目安と言われています。近年では、セメントなどを主原料としたスレートやガルバリウム鋼板製の金属屋根が新築業界で主流となっていますが、これらの屋根材は、20~30年ほどが寿命と言われており、紫外線や風雨の影響を受け続けることから、徐々にボロボロになったり、サビが浮いてきてしまったりするのです。
ただし、スレートや金属屋根に関しても、定期的な再塗装やカバー工事など、適切なメンテナンスを行っておけば、葺き替え工事のタイミングを後にずらすことは可能です。さらに、屋根材によっては、これ以上の耐用年数を持っているものもありますので、まずはご自宅に採用している屋根材の耐用年数を押さえておきましょう。
- ・スレート屋根(コロニアル・カラーベスト)・・・20~30年
- ・セメント瓦・・・20~30年
- ・モニエル瓦・・・20~30年
- ・粘土瓦(和瓦・洋瓦)・・・60~80年
- ・金属屋根(トタン)・・・10~20年
- ・金属屋根(ガルバリウム鋼板)・・・25~35年
日本国内で採用されることがある屋根材については、上記のような耐用年数となっています。これを見ると、瓦の耐用年数が圧倒的に長いということがわかりますね。ただし、瓦は非常に重量があり、建物の耐震性を悪くしてしまうという欠点があることから、新築業界ではスレートやガルバリウム鋼板屋根が主流となっています。
注意が必要なのは、上記の耐用年数に関しては、あくまでも屋根材そのものの寿命で、さらに必要なメンテナンスを適切に行っているということが前提です。例えば、スレートや金属屋根に関しては、定期的な再塗装が必要になるのですが、これを怠ってしまうと、一気に耐用年数が短くなってしまいます。また、その耐久力の高さが特長である粘土瓦に関しては、瓦以外の副材はこれほどの耐久力は持っていないという点に注意しなければいけません。例えば、屋根材の下に施工され、雨水の侵入を防ぐ防水シート(ルーフィング)の耐用年数が20~30年程度ですので、瓦の耐用年数に合わせて葺き替えタイミングを決めると、雨漏りしてしまうことになります。
したがって、瓦屋根の場合に関しては、築20~30年程度で、防水シートを交換する『葺き直し』という施工を選択する場合も多いです。葺き直しは、既存の瓦を一度取り払い、防水シートのやり替えを行って、元の瓦を再利用するという施工方法で、新たな屋根材を必要としないことから、葺き替えよりもコストを削減できます。耐久力が非常に高い瓦ならではの施工方法になります。
屋根の劣化状態から考える葺き替えタイミング
上述したように、屋根の葺き替え工事は、築20~30年程度で行うのが一般的です。これは、現在主流となっている屋根材の寿命がその程度であることや、防水シートなどの副材の耐用年数に合わせているからです。ただし、スレートや金属屋根を採用している住宅では、築20年目あたりでカバー工事を行い、築40年目以降に葺き替え工事を行うという家も多いです。
なお、屋根の葺き替え工事に関しては、建物の劣化状況などにより、そのタイミングが変わってしまう…という点も忘れてはいけません。上述したように、屋根は紫外線や風雨の影響を受け続ける場所ですので、何のメンテナンスもしていなければ、屋根材が本来持つ耐用年数よりも早く劣化が進行してしまいます。つまり、日頃の行いによって、実際に葺き替え工事が必要になるタイミングに差が生じてしまいますので、ここでは劣化症状から「そろそろ葺き替えしないと…」と考えるべき屋根の状態をいくつかご紹介します。
屋根材の広範囲な破損
スレートや瓦屋根に関しては、ひび割れや欠け、割れなどの破損状況から葺き替えタイミングを判断することができます。
耐用年数が近づいてくると、屋根の広範囲な部分に破損状況が生じてしまうことになり、屋根内に雨水が侵入してしまうことになります。なお、風に飛ばされてきた硬質な物が衝突し部分的に割れが生じた…という場合であれば、該当箇所の交換で対処可能です。
表面にコケが繁殖している
主にスレート屋根に言える葺き替え目安ですが、屋根の塗膜の効果が完全になくなり、湿気を含み続けるようになると、屋根表面にコケが繁殖して根付いていってしまいます。
この症状は、スレート屋根の典型的な葺き替え目安と考えてください。コケは、屋根の見た目が悪くなるなど、建物を外観を壊すのが問題と考えられていますが、実は屋根材の中に根がはってしまうことになり、屋根材そのものをボロボロにしてしまうのです。そのため、この状況まで放置されていた場合、塗装などではなく、葺き替えが必要と考えてください。
屋根材が柔らかくなっている
これも、基本的にスレート屋根の劣化症状です。一般の方が屋根の上に上ることなどあまりありませんが、屋根表面が波打って見えるなどと言った時は注意が必要です。
この状態の屋根は、上った時に足元がふかふかするといった感じになるのですが、この場合は屋根材内部の野地板まで水が浸透してしまっている恐れがあるので早急に葺き替え工事が必要です。
既に雨漏りが発生している
葺き替えタイミングを逃して放置してしまうと、建物内にまで浸水してしまい、雨漏りが発生してしまうことになります。
そして雨漏りが既に発生してしまっているという状態は、屋根材だけの問題ではなく、防水シートの劣化、野地板などの下地木材の腐食なども考えられます。つまり、早急に葺き替え工事をしなければ、建物自体を傷めてしまう問題になると考えてください。
まとめ
今回は、どのような建物でもいずれ必要になる葺き替え工事について、適切なタイミングで葺き替え工事を行えるよう、目安とすべき情報についてご紹介してきました。
この記事でご紹介したように、葺き替え工事は、建物に関わるリフォームの中でも特に高額になりがちな工事ということもあり、ほとんどの方が先延ばしにしたいと考えてしまっています。しかし、屋根は、建物に降り注ぐ雨水を家の中に侵入させないという目的がある部分ですし、これが劣化してしまうと、浸水を許してしまうと考えないといけないのです。
木造住宅の多い日本では、雨漏りは単に日常生活を不便にするという問題ではなく、家そのものを腐食させてしまい、家の寿命まで縮めてしまう問題ですので、葺き替え工事は適切なタイミングで行うようにしてください。