アスベスト(石綿)は、耐久性が高いのに安価という非常に優れた素材で、かつては建設資材にも広く使われていました。
健康被害の危険が報告されて、2006年に製造が全面禁止されましたが、それ以前の建物の多くにはアスベストが使われていたとされています。
特に戸建て住宅で一般的なスレート屋根にもよく使われていましたから、決して他人事ではありません。
ご自宅のスレート屋根がアスベスト入りかどうか見分ける方法をまずは慌てずに、ご自宅の状況を判断しましょう。
それから、アスベスト入りスレートの対処法として、おすすめのリフォーム工事についてもご紹介します。
依頼する業者選びの注意点も踏まえて、適切な対応ができるようにしましょう。
大切なお家、そしてご家族の健康に関わる問題です。
アスベスト入りスレート屋根材の判断!
まず、ご自宅のスレート屋根材がアスベスト入りかどうか確認をしましょう。
ただ、見分け方は3つご紹介しますが、一つ当てはまったからといって確実にそうだとは言い切れません。
できる限りすべて確認してみて、最終判断は資格を持った業者に点検してもらって確認してください。
2006年(築17年)以前に製造された屋根材
アスベスト(石綿)入りの製品は、2006年に製造・輸入などが完全禁止されました。
これ以前に作られた屋根の場合、アスベストが含まれている可能性があります。
ただし、2006年以前だからといってすべてアスベストが入っているというわけではありません。
実際には多くの建材メーカーが、1990年代頃からノンアスベストの製品を販売しているからです。
2006年以前、というのはあくまで「アスベスト入りの可能性がある」という目安です。
年数だけでは判別できませんので、2006年(築17年)以前のお家の方は次以のチェックをしてみましょう。
築15年以上でもひび割れ、欠けがほとんどない
アスベストはとても粘り強く頑丈で、耐久性が高い建材です。
そのため、アスベスト入りの屋根は10年20年経過しても経年劣化でのひび割れをほとんどしないことが多い建材です。
業者に屋根点検をしてもらい、劣化状態を確認してもらいましょう。
■アスベスト入りスレート
■屋根の変色
表面にカビ・コケは付着しているものの、ひび割れはありません。
築年数も合わせて考えると、アスベスト入りの可能性が高くなります。
逆に、ノンアスベストになってからの屋根は、代わりの素材を使っていますがアスベストほどの強度はなかなか出せず、10年をすぎると傷みが目立ってきます。
■ノンアスベストスレート
全体に小さなひび割れや欠けが出始めています。
2000年頃から既に販売されていたノンアスベスト屋根と推定できます。
ノンアスベスト切り替え時期のスレートに注意!
■スレート屋根の剥がれ捲れ
ノンアスベストに切り替わった直後(2000年代前半)の製品の一部は、強度不足などの不具合が多数報告されています。
一般的な塗装によるメンテナンスが適さないことがありますので、この時期の屋根の方はご注意が必要です。
メーカーが公表している商品名・品番が該当
各建材メーカーや国土交通省のWebサイトでは、過去に製造されたアスベスト含有建材の名前や品番などを調べることができます。
ご自宅の屋根の品名が分かる方は、こちらを検索してチェックしてみてはいかがですか。
商品名のほか、メーカー名でも検索できます。
その屋根材の製造時期や石綿含有量などを調べる事が出来ます。
スレートの品名などは主に設計図面に記載があります。
ただ、図面と実際に使われている屋根材が異なる場合も意外と多くありますので、注意が必要です。
建築現場では、急な仕様変更や現場判断での変更も多く、図面が100%正しいとは言い切れないのが現状です。
一番確実なのは、屋根を1枚剥がして内側や裏面などに刻印されている品番をチェックすることですが、これは手間もお金もかかってしまいます。
実は、解体しない限りはほぼ無害
アスベスト入りの屋根は健康被害が出るのでは、と非常に心配されている方もいるかもしれません。
しかし実際には、解体や破砕をしない限り、スレート屋根からアスベストが飛散する心配はありません。
スレート屋根に使われるアスベストはセメントに混ぜこまれてがっちり固定されており、飛散しにくい状態だからです。
また、万が一割れたりしても、屋根は外にあるため、人がすぐに吸い込む危険は非常に少ないです。
アスベストは“石綿”の名の通り細くて小さい繊維状のもので、吸い込むことで人体に悪影響が出てきます。
そのため、吸い込み方(飛散しやすさ)によって危険度が分かれていますが、スレートは危険度が最も低い「レベル3」です。
発塵性
レベル3
発塵性が比較的低い・・・人が吸い込む危険性は低い
石綿含有建材(形成板など)
・石綿含有スレート
・石綿含有窯業系サイディング
・石綿含有ビニル床シートなど
レベル2
発塵性が高い・・・人が吸い込む気先生がある
保温材・耐火被覆材・断熱材
・石綿含有ケイ酸カルシュウム保温材
・石綿含有耐火被覆材
・屋根用折版石綿断熱材
レベル1
発塵性が著しく高い・・・帆とが吸い込む危険性が非常に高い
吹付材
・吹付石綿
・石綿含有吹付けロックウール
・石綿含有吹付バーミキュライトなど
お家の屋根がアスベストが入っていたかと言って、「もうアスベストを吸い込んでいるかもしれない」という心配は要りません、ご安心ください。
悪徳業者が「すぐ撤去しないと大変なことに!」などと脅しのように言ってきても相手にせず、冷静に対処しましょう
リフォーム方法
アスベスト含有スレートに対するリフォームとしては 葺き替え/カバー工法/塗装 の3パターンがあります。
それぞれにメリット・デメリットがあるため、どれを選ぶかは皆様のお宅の状況やお考え次第です。
カバー工法
■屋根カバー工法
メリット
・工事による石綿飛散の心配がない
・20年以上もつ、耐久性の高い屋根に変えることができる
デメリット
・屋根の下地が劣化していたり、雨漏りしている場合は工事できない(葺き替え工事になります)
・屋根が重くなり、建物に負荷がかかる
屋根カバー工事は、今の屋根の上に新しい屋根材を重ねていく工事です。
現状のアスベスト入りスレートを解体せずに覆ってしまうため、飛散するリスクはありません。
またカバー屋根材は、ガルバリウム鋼板などスレートより耐久性が高いものが多く、今後のメンテナンス回数を減らすことができます。
撤去・処分費用もかからないため、とてもコストパフォーマンスの良い工事でおすすめできます。
ただ、屋根の下地まで傷んでいたり、すでに雨漏りしていたりする場合は、カバー工事はできません。
傷んだまま閉じこめてしまうと、劣化は進行してしまい、万が一カバー工事後に雨漏りなどが起こってしまうと、結局すべて撤去して葺き替えが必要になり、非常に高額なリフォームになってしまいます。
現状の屋根の傷みが少ない時におすすめできる工法ですので、業者に点検してもらって選択肢に入れましょう。
葺き替え
メリット
・アスベスト含有スレートを完全撤去できるため、今後の心配がなくなります。
・20年以上もつ、耐久性の高い屋根に変えることができる
デメリット
・費用が高額
・撤去の際に飛散リスクがあるため、アスベスト対策した工事が必要
・通常の葺き替え費用に加え、アスベスト処分用の費用が発生する
葺き替え工事は、今の屋根材を完全に撤去して新しい屋根に交換する工事です。
アスベスト入りの屋根材は完全になくなり不安もなくなります。
ただ、葺き替える時にはアスベストが飛散する危険性もあります。
周辺への配慮のための養生(覆い)をきちんと行い、できる限り破砕しないように手作業での解体、また飛散しにくいように水を撒きながらの作業となります。
通常よりも手間やアスベスト処分費がかかり、費用が高くなってしまいます。
塗装
メリット
・工事によるアスベスト飛散の心配がない
・最も安価に工事できる
デメリット
・今後も10年置き程度で塗り替えが発生する
・基材の耐用年数が来た時には葺き替えが必要になり、アスベスト対策については先送りにしかならない
塗装工事は、スレート屋根では最も一般的なメンテナンスです。
アスベスト入りスレートは非常に頑丈で割れにくいため、定期的な塗装で十分長持ちさせることができます。
葺き替えやカバー工事と比べても非常に安価にできる工事です。
ただ、メンテナンスをしていても20~30年を過ぎるとスレート材にも寿命が来ます。
その時には屋根の下地も傷んでいることがほとんどなので、結局葺き替え工事は必要になります。
つまりは、アスベストの撤去・処分の時期を先延ばしするということでしかありません。
アスベスト屋根取り扱い業者選び
アスベスト入りスレート屋根の工事をするときは、業者をきちんと選びましょう。
万が一にも不適切な工事をされてしまっては健康被害にもつながりかねませんし、屋根工事は大きな金額がかかるものだからです。
悪徳業者に騙されたり失敗したりしないため、しっかりした業者を見極めましょう。
様々な屋根工事を取り扱っているか
屋根のリフォームを、塗装、補修からカバー、葺き替えまで、幅広く扱っている実績のある会社を選びましょう。
屋根の状態や、皆様のご家庭の状況も考えて、最適な提案をしてもらえるからです。
アスベスト屋根のリフォーム方法はどれが適切か、お家の事情や住まわれている方の考えによって異なります。
リフォーム工事のプロとして様々な工事の知識経験があり、ご自宅に合った方法を提案してくれるところを選びましょう。
アスベスト撤去の資格を持っているか(葺き替え時)
葺き替え工事をする場合は、アスベストの撤去・処分に関わる専門の資格を持った人がいるところみ依頼しましょう。
安全で確実な作業に必要な資格だからです。
具体的には、以下のような資格を持っている人がいると安心です。
■アスベスト取り扱い資格
石綿作業主任者
・技能講習を受けて発行される国家資格
・現場で被害防止の指揮、監督を「行う人に必要となる
石綿取扱作業従事者
・特別教育講習を受けて発行される資格
・作業する全員がこの資格を見っていなければならない
特別管理産業廃棄物管理責任者
・吹付アスベスト、アスベスト含有吹付けロックウール、アスベスト含有保温材等の除去の場合に必要
・スレートは格闘しない
アスベスト診断士
・一般社団法人による発行
・アスベスト取り扱いについての適切なアドバイスが出きる
それぞれの屋根の状態、予算、そしてご家族の将来によって、ベストな方法は異なります。
あなたのお家のためを考えて提案をしてくれる業者を選び、これからも安心して暮らすためのリフォームにしましょう。
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